地下鉄の車内で女の子が連れに、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のあらすじを語っていた。なんかすごいじょうずに、講談みたいに話す子やなあと思って聞いていたら、いつの間にか次に「Dr.スランプ」のあらすじに移っていた。あんな、別に物語じゃないマンガのあらすじをこと細かに面白く話せるなんて!

そういうのはちょっとうらやましい。僕は好きなマンガや小説や音楽について、どんな作品でどんな風にじぶんはそれが好きかということを、いつもうまく話せないからだ。

口をつくのは関連する人名や作品名や定義のあいまいな用語ばかり。それじゃあ、すでに「わかっている」人と「わかっている」ことを確認しあうだけしかできやしない。

なにも知らない人に、なにかの素敵さについて伝えられたらどんなにかすばらしいことだろう。