ひとつの町のかたち
前日の日記に書いた「ひとつの町のかたち」が、随分おもしろい(まだ途中だけど)。ジュリアン・グラックが高等学校の寄宿舎生活を送ったナントの町についての文章なんだけど、遠い記憶と今ここにある思考が区別のできないくらいに入り混じって、ひとつの町とじぶんとの切り離せない親密さを核とした物語と風景が静かに流れていく。
町について書かれた物語というジャンルってだけでしんぼうたまらん上に、単なる追憶にとどまらないとこがいい。たとえばヴァルター・ベンヤミンの「ベルリンの幼年時代」も美しい本だけれど、ベルリンという空間が閉じすぎているという印象があって、それは過去をすでに遠いものとしているせいで追憶がやや甘いものに傾いているように感じられるからだろう。どちらかといえば、グラックさんの語り口は谷崎潤一郎の「吉野葛」に近いものを感じる。もっと奔放なの。でも優しくて上手やねん……(何が)。
ヴァルター・ベンヤミン著作集 12 (12) ベルリンの幼年時代
- 作者: ヴァルター・ベンヤミン,小寺昭次郎
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 1971/09
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1951/08/14
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 18回
- この商品を含むブログ (39件) を見る