舞洲

雨が止まないので、昼過ぎに出かける妻を心斎橋まで送っていく。2時間くらいで用事は終わる予定だというので、このままどこかに行って本を読んで時間をつぶすことにしよう、そうだできれば海が見える場所がいい。2号線から千鳥橋を抜けて舞洲へ向かった。
此花大橋を渡るその途中から、フンデルトヴァッサーのデザインで有名な大阪市環境事業局舞洲工場が見えてくる。はじめて間近で見ると、まずアホやなあという感想が自然に出てくる。彼の絵画の世界を巨大建築物として再現できているかというと微妙なところだけど、作り込みが甘いとはまったく思えない。ここまで本気で作られたものを実際に見た上で否定するのは難しいよ。税金のむだづかいっていう論点から離れたところで、もっといろんな評価をされたらいいのに。
残念ながら舞洲はぐるりと回っても海がきちんと見える場所は見当たらなかった。ほとんど人もクルマも通らない道端にクルマを停めて、エンジンを切ってシートをゆるやかに倒した。屋根やフロントガラスに打ちつけられる雨粒の音が静かに響く車内でしばらくぼんやりした後、「小林秀雄対話集」を読みはじめる。うううあんまりおもしろくない。のれない。しょっぱなの坂口安吾との対談なんてなにいってんのか半分もわからない。たぶんこの人たち酔っぱらい過ぎてる。でもツンだった小林さんが正宗白鳥との対談になってデレになるあたりが楽しかったので、まあよしとしよう。
雨が小降りになっているので、外に出て煙草を一本吸った。そろそろ時間だ、心斎橋に戻ろう。

小林秀雄対話集 (講談社文芸文庫)

小林秀雄対話集 (講談社文芸文庫)