尼崎〜堂島〜梅田〜福島〜梅田

お試しで利用できますよという新聞チラシがこのまえ入っていたので、尼崎のコストコへ。コストコとはアメリカが発祥の会員制卸売スーパーで、現在日本には5店鋪があるという。どでかい倉庫形式の店鋪で、客の外国人率が高かったよ。なんかアホみたいに大きなカートに商品満載して1回の買物で3〜4万使うというのがスタンダードな利用方法のようである。いろいろ見て回るのは楽しいんだけど(2時間かかった)、僕たちは夫婦2人暮しなので大量の買い物といっても限度があるし、アメリカの生活雑貨にさほど愛着を持っていないし、正直あんまり安くないし、結局ふだんと変わらないような買物をして会員加入はしませんでした。
いったん家に帰って堂島のSOUND器というお店に出かける。このまえ買った水尾比呂志「民窯の旅」を読んで、(砥部焼ってええかも……梅山窯かあ……)ポワ〜ンと考えていた焼物いちねんせい、梅山窯をたくさん置いてる店が堂島にあってラッキーなことに現在セール中との情報を入手。さっそくかけつけてみたわけなのだった。迷ったあげく、鉢と小皿と花瓶を購入。がんがん使えそうな、きれいで優しく親しみやすい磁器。それから妻の友人の出産祝いを買いに阪急百貨店へ。
さらにいったん家に帰って、福島の某カフェで軽く夕食兼お茶。そして梅田ガーデンシネマのレイトショーで「ロッテ・ライニガーの世界」。これがまたまたよかった。約1時間の長篇「アクメッド王子の冒険」、1926年にドイツで完成したこのアニメーションは「千夜一夜物語」からいただいたストーリーを影絵という手法で描いたもの。はじめに上映された短編3本が、まあこんなもんかな〜というレベルだったのに対して、「アクメッド王子」がはじまった途端に目が覚めましたよ。悪い魔法使いの流れるような動き! 力の入りかたが短編とぜんぜんちがう! 映像のみどころを3種類に分けてみるなら。まず影絵じたいの細かな造作、(是非は置いといて)丁寧に描かれたオリエント趣味がすばらしい。たとえば王女ディナルザデーや妖精パリバヌーの衣装、宮廷の風景。だけどそれよりスゴイのが、変幻自在のメタモルフォーゼ。冒頭の魔法使いの動きもそうなんだけど、こいつがコウモリに変身したり、魔物たちがくっついたり離れたり、そして圧巻なのは魔法使いと魔女の対決。ここ絶対に観ないと損!
さて3番めのみどころは何かというと、いくつかの画面処理です。観終わったあとに妻と「画面、なんかに似てたよねー」「うんうんアレね、アレ」、というのは同時代のドイツにはオスカー・フィッシンガーがいたはずで、特に精霊が現れる場面の処理なんてこれは何かつながりがないほうがおかしいんじゃないかと感じられるわけです。それで家に帰って調べてみると、詳しく解説してくれているページがあっさり見つかりました。

(前略)1921年には抽象映画の実験を可能にするマシンを設計した。彼は着色したロウの管を平行に束ねて、回転刃のスライサー上に置いた。そして装置の前にキャメラをセットして、シャッターと刃の動きをシンクロさせた。1枚1枚スライスする毎にロウの断面に現れた変化の様子はキャメラによって撮影される。(中略)同じくミュンヘンに住んでいたヴァルター・ルットマンはフィッシンガーのもとを数度訪れ、1922年11月にワックス・カッティングマシン1個とその商業利用権を購入した。創業から4年後、フィッシンガーの2つの会社は負債・怨恨・訴訟のために倒産した。さらに、ルットマンとロッテ・ライニガーLotte Reinigerが自分のマシンを『アクメッド王子』の背景効果に使用したという事件が落胆したフィッシンガーに追い討ちをかけた。「おいしいところを他人に奪われてしまった」とフィッシンガーはディーボルトに書き送っている。
http://homepage1.nifty.com/gon2/cartoon/cartoon10.html

なるほど、こんな関係があったとはね。残念ながらあまり友好的な交流があったわけではないようだけど、ライニガーとフィッシンガーのどちらかが欠けていたら後世の僕たちがあんなすばらしい画面処理を観ることができなくなっていたと考えると、この2人が同じ時代にいたことに感謝ですよ。