金曜の夜
19時半になるあたりで完全に燃料切れになってしまった。この様子じゃどっちみち明日も出勤しなくちゃならないし、今日はもう帰ることにしよう。年度末を控えて仕事がずいぶんと繁忙期に入っていて、少々うんざりしているのです。
梅田に着いて、まだちょっとは見られるかなと阪急古書のまちに寄り道。均一棚で吉田健一の「旅の時間」(河出書房新社)を見つけたところでタイムアップ。僕にとって吉田健一は、できれば文庫本よりはハードカバーで読みたい小説家で、安いものを見かけたら買うようにしているのです。それから堂島のジュンク堂へ行って、何冊か購入。
- 作者: 前田愛
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1992/08
- メディア: 文庫
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- 作者: 正岡子規
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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- 作者: 高峰秀子
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- 作者: 国文学編集部
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- メディア: 単行本
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帰宅して、ささっとペペロンチーノを作ってしょうゆを垂らしたのと熱燗。今日は妻が友人と外食してくることになっていて、1人になるとどうもこういう下世話なかんじの食生活に走ってしまう。買ってきたLivesという雑誌をながめながら食べる。「20代&30代のジュータク事情」という特集で、grafが内装を手がけた家が掲載されているのでどんなかなーと思って。僕たちも現在のマンションに暮らしはじめたときに、grafにいくつか家具を作ってもらっていて、ヨソサマのお宅がちょびっと気になるのです。そうこうしてるうちに妻が帰ってくる。そしたらなんと彼女もLivesの同じ号を買ってきていた。まあ、一緒に暮らしているとこんなことはままあって、それはそれで悪いものではないです。
吉田健一の「旅の時間」をパラパラめくる。これはいろんな場所や、移動中の機内車内を舞台にした短編小説集で、そのなかに「大阪の夜」というお話があって、それはこんな一文ではじまる。
どの辺が大阪で一番この町らしいのだろうかというようなことを考えるのはこれは何も大阪に限ったことでなくて無理な話に違いないが道頓堀を御堂筋の方に行って右に曲がれば千日前と思う頃になってまだ人通りに流されていると兎に角大阪に来ている感じになる。
いわゆるミナミが大阪を代表する場所だという意見に、(まあ確かにそうともいえるけど……)と思いつつ完全に賛同するわけじゃない僕のような人間にとって、とても実感できるものがここにはあります。「兎に角」ということばが効いている。そしてまた、吉田健一の文章はつとに悪文の例として挙げられるけれど、これもふんだんにそのスパイスがかかっていて、その不安定な記述はやっぱり「兎に角」ということばによって不安定なまま決着をつけられている。そうやって僕は安心して、吉田健一の小説の世界を訪れることができる。おひさしぶり。