仕事に出かけた土曜日

働きましたよー。人が少ないとどうも暖房がきちんと効かなくてうすら寒いのな。
そういえば昨日ジュンク堂で見かけたんだけど、二階堂奥歯の著作として新刊書籍が出ています。彼女のウェブ日記の採録に関係者の回想を併せたもののようです。
彼女の日記でよく覚えているのは、フライパンと分析哲学の話。彼女もその妹もフライパン料理が好きで、だけど家にはフライパンがひとつしかなくてよく喧嘩になる。これに対して母親は「もうひとつフライパン買えばいいじゃない」といった。この言葉に対して彼女は、問題を解決するのではなく解消してしまうという極めて分析哲学的なアプローチだと思うんだけど、なんて文学部の男子学生が聞けば失禁して喜びそうなコメントを書いていたのでした。
二階堂奥歯の場合はその死で残念ながら失われてしまったわけだけど、そこまで極端なかたちじゃなくても、若い女の子(男の子でもいいけど)のそんなクレバーさは年をとるにつれて段々と輝きを失っていく。これはいたずらに馬齢を重ねたおじさんの経験則からいって、まあほとんど間違いない。だけどその代わりに身に付けられるものもあって、そうやって生きていけるならそれに越したことはない。身近な例として、妻を見ていてもそう思う。おそらく僕が妻を知ったころに比べると、上の意味のようなクレバーな部分は彼女のなかで影をひそめつつある(失礼だな)。でも今ありふれた生活のなかで妻がふりまく些細な笑いや優しさや可笑しさに僕はずいぶん助けられていて、以前より現在の妻のほうが僕ははっきりいって断然好きだ。あまりにも平凡すぎる話で申し訳ないけれど、年をとるのって悪くないよと男子文学部生のなれの果ては思うのでした。

八本脚の蝶

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