弘前滞在(2日め)

津軽塗りを置いている店をいくつか廻る。僕が好きなのは七々子塗り(ななこぬり)と呼ばれる種類のもので、これは乾く前の漆に菜種を蒔いて、その跡に漆を重ね塗りして磨いていくと現れる、江戸小紋に似た模様のもの。もともとは魚(なな)卵(こ)のように見えるからというネーミングらしい。
使わないもの買ってもな……というわけで、形も気に入ったぐい呑みがあったので買おうと思ったんだけど、縁のところの朱塗りがすこし薄いせいか下の黒塗りが透けて見えてしまっている。店の人に同じ形で別のものないですかと訊いてみるけど、今ちょっとそれしかないですとの答え。ちょっと塗りが未熟なのは確かなので、よければ値段はお引きしますといってくれたけど、せっかくなのできれいなものを新しく用意してもらうことにした。2〜3カ月かかるとのことなのでお預けをくらったのは残念だけど、店員さんの対応がとても誠実で、いい買物ができたような気になりました。
今回の旅では特に本屋事情を調べてくることはしなかったんだけど、偶々古本屋を1軒見つけたので少し寄り道して、デンネボルク「ヤンと野生の馬」(福武文庫)。挿絵のホルスト・レムケは、某イラストレーションユニットの元ネタのひとつという説があるようだけど、それはちょっと強引なような……。でもまあ、確かにこの素朴さは今日のゆるめのイラストに通じるものはあるかもしれないので、もっと評価されててもよいと思う。