快晴と古書と映画

ベランダの植木の緑がすこしずつ濃くなっている。
そういえば今日は阪急古書のまちの均一ワゴンセールの日か、と思って昼前から出かける。市内の道路はクルマが少なくて、カットソー1枚でスクーターで走るのがとても気持ちいい。この季節、茶屋町アプローズの南側の道は街路樹がトンネルを作るように若葉が茂っている。スクーターを停めて、古書のまちへ。
均一ワゴンには欲しいものが見当たらなかったけど、通常の棚で「日本名菓辞典」(守安正、東京堂出版)、「焼物雑記」(井伏鱒二文化出版局)を購入。「日本名菓辞典」は、なかなかの拾いもの。全国各地の菓子に関する覚え書き/解説を事典のように羅列しているもので、といっても平板な客観的記述だけではなく、たとえばいちばん最初の会津葵(あいづあおい)の項目はこんなふうに始まる。

会津若松市の名物。会津葵の特製品である。会津地方は米のよいところとお酒のよいところで有名だが、不思議とお菓子のよいのが出ない。「五郎兵衛飴」以外これといって、よい米をいかしたお菓子を見たことがなかった。それだけに、この新菓子の出現は晴天の霹靂ともいうべきものであった。

いや、どんなお菓子か知らないんだけどさ、晴天の霹靂とまでいわれちゃあ、いちど食べてみたくもなるじゃないですか。
それからPLANET studyo+1へ、鴨居羊子によるPR映画「女は下着で作られる」を観に行く。しかし堂山町だったらこのまま歩いていったほうが早いだろ、と思ったのがまちがいだった。なんとPLANET studyo+1は先月末から中崎町に移転していたのだった。焦って足早に歩いて間に合ったんだけど、観客は僕含めて4人だけだった。いや〜、文化系女子でいっぱいだったらどうしようとか悩んだのがムダだった。鴨居さんはもう消費されちゃったんですか?とかちょっといじわるなこと思ったりしてね。映画自体は、テンション高くグダグダに進んでいくかんじで、まあ珍フィルムではありました。
そのあと梅田に戻ってぶらぶらしたあと、天満の伏見屋書林へ。ここでは「もう一つの青春」(ジャン=ルネ・ユグナン、晶文社)を購入。しかし訳者あとがきでこんな風に書かれる本というのも……。

文学者としてのユグナンは「荒れた海辺」一冊によって残るのであって、「もう一つの青春」は本質的にそれに何一つつけくわえないというのはおそらく正しいでしょう。

淀屋橋のタリーズでコーヒーを飲みながら、今日買った本たちをほくほくながめる。そしていったん家に戻ってから、帰阪する妻を新大阪まで迎えにいく。おかえりー!