風と映画の日曜日

中崎町PLANET studyo plus oneで現在上映されているチェコ映画回顧展、今日はミロス・フォアマンの「火事だよ!カワイ子ちゃん」を妻といっしょに観に行きました。
ミロス・フォアマンはアメリカに亡命して後、「カッコーの巣の上で」と「アマデウス」でアカデミー賞監督賞をもらっているわけだけど、まあ正直いってあんまりシネフィル(!)のあいだで評価が高い監督とはいえないんじゃないかと思う。たとえば60年代以降にオスカーを2回以上獲得したほかの監督たち、ロバート・ワイズオリヴァー・ストーンスティーブン・スピルバーグクリント・イーストウッドに比べてみると、よくもわるくもそれほど積極的に語られる存在じゃないですよね。たしかになんていうか、みょうに感動作に仕立て上げてしまう手さばきみたいなのが敬遠されるのかもしれない。「カッコーの巣の上で」だって、ビートニクスとヒッピーの橋渡を担ったケン・キージーの原作の映画化だけど、クールな原作の雰囲気はどこへやら、なんか安っぽい人間賛歌みたいな話になっちゃってたし。
でもなにしろ今日のは「火事だよ!カワイ子ちゃん」だからな。これでヒューマンドラマだったらむしろスゴイといわざるを得んよな。とか思いながら観に行ったら、素直に笑える映画だったのでよかったです。チェコのある村で消防団が開いたダンスパーティが映画の舞台なわけですが、イイ顔の親父どもと、横幅の広いおばさんたち(でも笑うとかわいかったりする)と、はじらいつつ凶暴できれいな女の子たちが出てくるという、ある意味で中欧映画の王道パターンであり、そういうのは僕はだいすきなんである。
たしかにふっと気を抜くと、体制への風刺だとかでしらけさせるような部分がないわけではないんだけどさ。でもね、とちゅうでひとつだけ場面がパーティ会場から離れて、ちかくの火事現場へ移るところがあるんだけど、あそこは本当によかったなあ。あっ、いかん、これはフォアマン監督の感動させどころがはじまるのかな?と警戒したけれど、まったくそんなことはなく、消防団員はべつに超人的なはたらきを見せることなどなく淡々と消火をしていくだけで、人々もそれをぼうっと見てるだけという。なんだそれ。そして暗がりのなかで女の子ふたりが並んで、炎の燃えるのをうけて顔をすこしオレンジ色に染めながら酒瓶を回し呑みしてるのがすごいかわいかったです。それまでずっと女の子の撮りかたが、ちゃんと60年代してますやんという程度だったのに、いっきに19世紀くらいまでふっ飛ばされた気分。これはよかった。