土曜日のドライブ

熱いお茶をいれた水筒と、おにぎりを持って、京都へ。
最初は松尾大社。目当ては、重森三玲の最後の作庭となった松風苑三庭です。これは、上古の庭、曲水の庭、蓬莱の庭と名づけられた、それぞれ趣の異なる3つの庭なんだけど、松尾山の磐座(いわくら)を模してつくられた上古の庭が、日本庭園のフォーマットに収まらない前衛っぷりでサイコーでした。曲水の庭、蓬莱の庭は、枯山水ではなく実際に水を用いた庭です。曲水の庭はその流れがとても有機的、ある意味ではグロテスクといってもいいくらいに印象深かったのに対して、蓬莱の庭はちょっと平易にできあがりすぎているような感じもしました。ともあれ、重森三玲の庭は僕にとって、とても音楽的で、ピピーガーピーと電子音が耳の奥で聴こえたり、ババーン!とオーケストラの演奏が空から降ってきたりするようなところがおもしろいです。
どこか野外でお昼にしようかといっていたけれど、寒すぎるので車のなかでおにぎりを食べてから、護王神社へ。猪にゆかりが深いことで知られる神社で、今年は取材などで取り上げられることも多かったから目にした方も多いんじゃないかと思います。亥年生まれになる予定の子どものことをよろしくお願いして、一乗寺へ。
“つばめ”というカフェですこし休憩してから、恵文社一乗寺店へ。「恵文社冬の大古本市」展と、生活館で「夜長堂の古道具市」展が開催されているためか、けっこうな人出で、ちょっと驚きました。「古本市」展は開催されてから、もう日が経っているせいもあるんだろうけど、特にほしいものも見つからなかったのでパスして、新刊書籍などのみ購入。「古道具市」展では、妻がめずらしく蕎麦猪口に興味を引かれているもよう。茶と緑の格子紋が描かれた蕎麦猪口は、骨董というほど高級ぶらず、古道具と呼ぶのにふさわしいかわいさがあって、僕もひとめで気に入ったのでした。ほら、冷蔵庫に残ってるおからとかちょびっと盛ったらいい感じなんじゃん、と焚きつけて買わせる。
帰宅したのが19時くらいで、外ですませようかと、本町の幸福粥店で夕食。家に戻って、今日買ってきた、大谷能生の『「河岸忘日抄」より』を聴く。タイトルのとおり、堀江敏幸の小説「河岸忘日抄」を原作として、朗読や演奏で構成されたアルバム。ちょうど1年前くらいに「河岸忘日抄」を読んだとき、日記にも書いたけれど、ビデオゲームにしてみたらおもしろそうだなーという感想を持ったことがあって、しかし音楽にするという発想はなかったわと感心して試しに買ってみた次第。feepのライブを観たことがあるけど、わりと好みの音楽だったしね。正直をいうと、試みとして成功しているとはいいがたい気がするけれど(なぜこの小説=散文が選ばれ、朗読される必要があったのか、ということが僕にはよくわからない)、もすこし単純に録音物として楽しむならば、ここちよく耳を傾ける価値があるくらいの感じで、まあそれで十分じゃんといわれればそのとおりです。

「河岸忘日抄」より

「河岸忘日抄」より