ひとりで過ごす水曜日

ひとり暮らしがはじまりました。十代から二十代にかけて過ごしたひとり暮らしとちがって、せまい部屋に居候が転がってることもないし、夜中に「いま何してんの?」なんてかかってくる電話もないし、すごく静かです。これはなんちうか、たぶん妻が帰ってきて赤ちゃんがやってきたら、その騒がしさとの落差にとまどうことであろう。
そもそもこんなに静かだとさびしいじゃないか、というわけでGordon Mummaの「Studio Retrospect」を流しているところ。結婚した当初、アルファベット順にならべた棚のCDのなかから妻のものを順番に聴いてみていたことがあった。当然ながらあたりもはずれもあるわけで、なんかこんな義務みたいにして音楽聴くのもアホらしいなと、途中でやめちゃったけど。このCDを聴いた記憶がないので、Mにたどりつく前にほったらかしちゃったものと思われます。

STUDIO RETROSPECT is a collection of six compositions made in electronic music studios from 1959 to 1984. All were composed for concert hall or theatre performance with choreography, as well as for distribution on recordings. Music from the Venezia Space Theatre, The Dresden Interleaf, and Echo-D were composed for quadraphonic theatre systems, and were later spatially remodeled for release on stereophonic recordings.

電子音楽やノイズが否応なく前衛というレッテルを貼られた時代を経て、それらがポップ・ミュージックの領域へと拡散した現在、ゴードン・ムンマの音楽はようやく正当な評価を得られるんじゃないかといったら大げさだろうか。盛り上げるところは盛り上げ、抑制するところは抑制するといった、作曲者のコントロール下におかれた、いささか古典的な展開は、たとえば同時期にマース・カニンガム・ダンス・カンパニーに曲を提供していたジョン・ケージやデヴィッド・チュードアと比べると、方法論的に見劣りしてしまうのはたしかだ。ほら、やっぱ前衛大好きっ子、現音大好きっ子の基本は、作曲=composition=構成、だもんね。だけど、ムンマさんには彼らにはない(あるのかもしれないけど、そんなに見せびらかさなかった)フレージングの妙と演奏デバイスに対する偏愛があった。はっと耳を奪われるような音色の数々を満喫できる1枚。

Mumma: Studio Retrospect

Mumma: Studio Retrospect