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月曜日の文庫目録

阪田寛夫の「うるわしきあさも」(ASIN:4061984713)を読み終えて、興奮するというたぐいの読書体験ではないにしても満ち足りたきぶんになりつつ、しかし講談社文芸文庫はいいとこついてくるよなあ……と改めて感心する。とはいえ、このピンポイントぶりはそんなに昔からのことじゃないよなーという気もするんだよなと思って、目録が手元にないので講談社のショッピングサイトからデータをコピー整形して、スプレッドシートに落として、ふーむふーむと眺めているところです。
ちなみに、作家別に収録されている冊数が多い順に並べると、次のようになります。上下巻とかは合わせて1冊に数えます。

1 井伏鱒二 14
2 吉田健一 13
3 花田清輝 12
3 石川淳 12
3 大江健三郎 12
3 白洲正子 12
7 坂口安吾 10
8 川端康成 9
8 大岡昇平 9
8 木山捷平 9
11 横光利一 8
12 安岡章太郎 7
12 吉行淳之介 7
12 幸田文 7
12 中野重治 7

基本的によその出版社から刊行されていないものという括りがあることを考えると、鉄壁といっていいかもしれません。大江健三郎は自社の通常文庫に収めにくいものを持ってきてる節があるので、ちょっと毛色がちがいますが。なかでも、木山捷平がトップ10に入っているというのが、狂っていてたいへんよろしい。
刊行年順に全体を通して見ると、やっぱり微妙な移り変わりがありますね。創刊当時は同時代的な色合いが強かったけれど、後のほうになってくるにしたがって時代の幅は拡散してきてるし、誤解を恐れずにいうとディレッタントな受容をされる小説・随筆の割合が多くなってきたようにも思えます。90年代末以降になると、どうもウェブ上での本好き・古書好きの意見が反映されてるんじゃないかというのは考えすぎでしょうか。野溝七生子田中小実昌富士正晴山田稔久坂葉子あたりとか。
これだけしっかりしたリストを前にすると、重箱のすみをつつくことにしかならないのですが、今後の収録作品の予測を立ててみましょう。まず、藤枝静男が小説ばかりで随筆が1冊も収録されていないのはおかしい。もともと講談社でたくさん仕事をしてた人なんだし、「小感軽談」や「茫界偏視」なんてぴったりだと思うんだけどなー。それから、後藤明生も「挟み撃ち」しか入手できないというのは寂しすぎる。オーソドックスに考えれば「吉野太夫」、ちょっとひねって「酒 猫 人間」とかどうだ。古書好きの期待にこたえるという路線でいけば、藤沢桓夫に賭けてみてもいいかもしれないですね。
いろいろほかに思うところはあるのですが、機会があればまたそのうちに。そうそう、水上瀧太郎の「大阪の宿」が、講談社のサイト上ではなんの手違いだか、ボブ・サップとの共著になっていたことはご報告しておきます。