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東京ワーキン


今週は東京で仕事がありました。仕事先は平河町だったんだけど、予約するのが遅かったせいもあって、近所には適当なホテルが見つからず。範囲を広げると、検索結果に九段会館が現れたのであった。そういえば中に入ったことないなあと思って予約ボタンをぽちり。
夕方に仕事が終わって、内堀通りを九段下までぶらぶら歩くと、靖国神社はお祭りの真っ最中でした。みたままつり。ちょっと夜店を覗いてみたものの、スーツじゃあんまり暑すぎるし、早々に九段会館にチェックインして、持ってきた別件の仕事にかかる。ひとりぼっち超ひさしぶり。下着でタバコすいながらという仕事環境があまりに新鮮なためにぐいぐい進んで、考えていたより早めに終わってしまった。しかたがないので、東京にくる車中で読みかけていた横光利一の「家族会議」のつづきをベッドで読みはじめるうちにうとうとしはじめる。

 「あら、もう灯がつきましたわ」
 と泰子は云った。高之は立ち上がって縁に出た。かすかに衣擦れの音がして、後ろに立った泰子の襟もとから漂う匂いが、雨気に籠って放れ難い。屋根をかけた舟が雨中を静々と棹さしつつ登って来た。

これは松平という清水橋のあたりにある旅館での場面。旅館が実在したのかどうかはよく知らないけど、清水橋というといまのアメリカ村三角公園のあたりだといいます。つまり、舟が登る川はこれも埋め立てられていまはもうない西横堀川。ちょっと現在からは考えられない情景です。
この小説が書かれたのは1935年で、九段会館(当時は軍人会館)の竣工が1年ちがいの1934年。そう思うと、東京のほうが昔をしのぶよすがは多く残されているのかもしれませんね。

家族会議 (講談社文芸文庫)

家族会議 (講談社文芸文庫)