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ちょっと変わった町

金曜から妻と娘が実家に帰っていて(きなくさい話ではありません)、この週末はひさしぶりにひとりで過ごしました。とはいっても、なかなか雑事が多くて、とくにどこかに出かけたりってわけでもなかったんですけど。土曜は自動車を定期点検に出しに行って、ディーラーが大阪ドームの近くにあるんですけど、点検してもらっているあいだに辺りをひさしぶりに散歩しました。
中央大通りとの交差点を抜けてみなと通りを南に歩いていくと、ごちゃごちゃした町並みの向こうに大阪ドームの屋根が姿をあらわします。これが僕がはじめて大阪で暮らす部屋を探しはじめたときに見た風景。最初に目星をつけた阿波座にもうひとつ折り合う物件がなかったので、そのまま九条のほうへ歩き出してこの風景を見たときからちょうど7年が経ってしまったけれど、あまり変わってはいないように思う。
思い出すと、九条で暮らすというのはなかなかに得がたい体験でした。相場よりも比較的安い部屋を仲介してくれた不動産屋は「ご存じのとおり、ちょっと変わった町ですけど暮らしやすいです。市の中心部までこんなに近いのに、物価も安いし、おいしい食べもの屋もけっこうありますしね」と云っていたけれど、この時点で僕はちょっと変わった町だということはまったくご存じなかったのだから暢気な話である。そう、僕が結婚して妻と暮らすために借りた部屋は、いわゆる松島新地のなかにあったのです。
先にひとりで暮らしはじめた初日、夜になって辺りを歩いたときは本当に腰が抜けるほどびっくりした。ちょっと変わった家が多いなあと思っていた町並みは紅色のあやしい灯りが点り、フェデリコ・フェリーニ的な恰幅のよいおばさんが家々の玄関に、そしてその奥には古い家に似つかわしくない化粧をした女性たちが鎮座しているのである。これって……買えるということですよねえ……。あせって妻に電話で報告したところ、へえーそんなのまだあるんだねと暢気に話していたけれど、こちらに来て実際に目の当たりにしたら、やはり相当な衝撃を受けていた。そらそうだ。ただ実際に暮らしはじめると、ある意味では規律がとれているというか、そのなかで身の危険を感じるような騒ぎなんかには出会ったことはないし、駅からの帰りもそういった店たちの前を歩いていくことになるので、逆に夜になっても安心というのはよかった。いつまで経っても、パンパンと手を打って誘われるのはすこしうっとうしかったけれども。
いまは九条を離れてべつの町に暮らしているけれども、そうやっていつのまにか、東京より、京都より、大阪で暮らした時間のほうが長くなってしまいました。まだ慣れないところはあるけど、いい町だなと思っています。
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