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名前を考える

世のなかにはいろんな商品があって、その多くにはきちんと名前がつけられているのだから、考えてみれば驚きである。音楽の世界にはメロディ限界説というものがあるけれど、商品名もそうとう限界にきているのではないだろうか。昔だったら「センチュリー」とか「スカイライン」なんて中学英語をそのまま使えたけれども、現在ではなかなかそうもいかないらしい。「わたしたちは、ウラル語族ガナサン語で『北極星』を意味するソクゥードということばをこの車の名前につけました」とか、よくわからない命名がまま見られがちである。「『ソクゥード』には日本語の『速度』の意味も込めています」なんて、いらないオチまでつけてんのな。
しかし、かちょうさんは、こういう状況にはわりと同情的です。僕も、仕事でときどき商品名やその惹句を考えなければならないから。ブレスト的にわーわー出し合う場ならぜんぜんよいのですが、えらい人たちが出る会議でプレゼン、検討という話になると、ほんとうに逃げ出したくなる。だいの大人たちが重苦しい雰囲気で、「わくわく」と「どきどき」はどっちにすべきでしょうねえなどと話し合っているのだから、日本経済の先行きは暗い。
じゃあ「どきどき」で……と大勢が決してきたあたりで、営業のサトウさんがいらんことを云いはじめる。しかし数字的にはこれまで「わくわく」を使ったほうが当たりは大きいですよ。これに対して、べつの営業ワタナベさんが返す。しかし小売の現場レベルでは、もう「わくわく」でもないでしょという声をよく聞きますからね。あのーきみたち、資料は事前に配布してるんだから、そういう話は営業会議でまとめておいてくれんかね。しかし、かちょうさんにはここまでの展開は読めていた。そろそろ満を持して本命の「どきにょき」案で鎮静化を図るか……どうよこの軍師ぶり! というところで、ヤマダさんが口を開く。「どきもにょ」ていうのはどうですかね? あーあー!先にそんな似たようなの出すなよ! 出すのはいいけど、おまえそれちゃんとじぶんで収拾つけろよ! 予想どおり、その「もにょ」ってのはなんだい、ちょっとユーザーを軽く見すぎなんじゃないですか、などとネガティブに振れた意見が続出するも、云った本人知らん顔。これ以上長引くのはかんべんだよ。
えーとですね、先ほどのヤマダさんの「どきもにょ」というご提案、なかなかユニークで検討に値するご意見だと思います(←まず上げる)。ただ、拗音で終わるというのが語感の点からすこしどうかなと思うところもありまして、私といたしましては「どきにょき」というのをいま思いついたんですが(←うそつけ)、いかがでしょうか? 外国の例ですけど、有名なKodakの命名のエピソードを見ても、Kの音がリズムよく入るというのは商品名として訴求力(←マジックワード)大だと思うんですね。で、「にょき」の意味なんですけど……。
ひと通り説明が終わり、んーいいんじゃないの?などという声を聞きながら、さてどやって締めにもってったろかいというところで、今まで黙ってPCをいじっていたナカムラさんが発言する。他社から「どっきりちょっきん」というのが出てるんですけど、まぎらわしくないですか? ええええ! それくらい調べてるよ、どこがまぎらわしいんだよ! しかし時すでに遅し。どうせならもっと新しいものがいいよね、かちょうくん、ほかになんかないの? どうでもよくなってきたかちょうさんは「ちんぴょろすぽーん」ていうのはどうですかね、なんて口走って皆さんに完全無視されるというね。最終的には、はじめ影もかたちもなかった「はきはき」に決定していたりして、たぶん世のなかの商品名の半分はこんなかんじでできている。