ほめことば

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かちょうさんは、わりと他人のほめ言葉はすなおに受け取ることにしています。おおざっぱにいって、そのほうが気分がよくなるからなのですが、それでも、あんまりそのまま受け取らないほうがよい場面もあるということも心得ています。「このまえ洋服買いに行ったらさー、『お客さまよくお似合いですよ』なんていわれちゃって」などと大まじめな顔で言ったら、相手も困惑することであろう。おなじように、射精産業で「お客さんのよかったァ……」と言われたとしても、そういうことはあまり吹聴するべきではない。
じゃあ、歯科医院でそんなふうに言われたら、どう受け取るべきなのだろうか? 二か月におよぶ奥歯の治療がこの週末で終わったわけなんですが、終了にあたって歯科医がやたらにほめるのであった。かちょうさんの歯はめったにない丈夫な歯ですよ。ほんとにこれまでフッ素塗布とかしてないんですか? つやもあるし、ここまで恵まれた素質の歯はなかなかないんですよ……。そんなこといわれれば悪い気はしないけど、そもそも歯科経験がほとんどないので、営業トークなのか、特にいつわりなく話しているのかの判断がつかないわけです。
そう考えると、ふだん意識することなく行っている、どういったコンテクストでその発話がなされているかという判断も、じつはとても限定された範囲でしか成立していないことがわかります。ちょっと知らない世界だともう通用しない。相手の表情や視線、しぐさで判断できるでしょという人もいるかもしれないですけど、こちとらそこまでリア充ではないのである。もう、このまま布団をひっかぶって寝てしまいたい。あれだよね、その点では、こども相手のコミュニケーションって気楽だと思います。非言語的なメッセージといっても、その層はたかが知れている。そもそも0歳児のほうは、発話そのものがないのである。
まあ、なにが言いたいかというと、歯科医師がなかなか笑顔のかわいい女性だったので、そういうシチュエーションではややもするとメッセージは正しく伝達されないという、古典的な教訓をもって結びとしたいと思います。