「ロバと王女」

おとつい金曜日の夕刊は映画の広告が満載でした。お正月の真っ向勝負を避けたかんじの映画たちが並ぶなか、待ちに待った「ロバと王女」の広告も。しかしなぜコメントを寄せているのが愛川欽也うつみ宮土理? それは激しく方向性がまちがってるのではないだろうか?
とか思いながら梅田ガーデンシネマに観に行ってきたわけですが、これが期待に背かず恐ろしくおもしろかったのでした。もうね、1時間半のあいだ美術と衣装にしびれっぱなし。ジャック・ドゥミはじぶんが映画を撮っているのがハリウッドではないことについて悶々とし、とうとうこの作品で爆発してしまったのかもしれない。フランスでミュージカル撮る意味って何やろ……フランスでしかできへんことって……(ぴーん)王女様と王子様で1本撮ったるで! ていうかんじできらびやかなドレスとかぼちゃパンツが舞う映画ができあがったということか。
ジャック・ぺランの王子が夢みるゆめこちゃんなのに対して、カトリーヌ・ドヌーブの王女の逞しさがまぶしい。ペローの童話ではもうちょっと知恵者のお姫さまという性格が強かったような気がしたけど気のせいですか。小屋の中を覗いた王子が立ち去っていくのを、かかったで!とガッツポーズしかねない勢いで見送る王女。愛のケーキ作ります……て、粉を4掴みどさっ、バターを1固まりがばっ、火にかけてほーらできたって焼き加減たしかめるのにぐさってナイフ刺したり、とにかく男らしいケーキを作る王女(しかしこのシーンが映画のなかでいちばん素晴らしい)。
ほかにも例を挙げたらきりがないけど、「倒錯」ということばがこの映画には似つかわしい。ありふれた言葉だけど、こんなポップでゴージャスな倒錯はほかに観たことがない。こんだけやっとけば、ハッピーエンドのその後なんて気にかかるわけがないじゃないか。