古い映画の夜

夜、中之島のgmへ。THEATRE PRODUCTSの音楽部門が開催する「THEATRE MUSICAの映画館」というイベント。ジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」、フェルディナン・ゼッカの「アリババと40人の盗賊」、そして溝口健二の「東京行進曲」に音楽をつけて上映するという試み。
月世界旅行」と「アリババの40人の盗賊」にはDJによる音楽。オールドスクールなバックトラックが交じったりして、なかなか映像と微妙な距離感でおもしろい。
「東京行進曲」にはピアノと自作のからくり楽器による演奏がつけられていて、正直なところTHEATRE MUSICA善戦しかし完敗という感じだったなー。貧しい家の娘が芸者になって上流階級の青年2人に見初められて、そのうち一人はなんと実の兄で、ちがう方の男と結婚する……という原作菊地寛のお話です。その出会いのシーン、すこし高台になったテニスコートで遊ぶ青年たちの手から離れたボールが、高台の下の貧しい長屋のほうへ転がっていく。そのボールを拾ってフェンス越しに投げて返そうとして届かなくて、それを何度も繰り返すのがヒロイン道代。たすき掛けで健康的に笑って、物珍しそうにテニスボールを何度も投げ返してくれるこんな娘がいたら、そりゃあ僕だって好きになっちゃうよ。男2人の背姿を通してくっきり彼女にピントを合わせたカメラもいい。とはいっても、そういう正統的な映像だけじゃなくて、道代の夢に死んだお母さんの影が出てくる場面や藤原父と鹿の角の置き物の影が重なる場面なんて、ドイツ表現主義ぽい匂いが漂ってくる暗さもあったりして一筋縄でいかないんだけどさ。完敗とはいえ、THEATRE MUSICAの音楽も、そのへんはばっちり意識してるように感じられてよかったです。