陶器をたのしんだ日曜日

兵庫県篠山市へ。目当ては丹波古陶館(http://www.tanbakotoukan.jp/)と兵庫陶芸美術館http://www.mcart.jp/)。
城下町だった篠山市のなかでも、往時の町並みを色濃く残している河原町という地域に丹波古陶館はある。丹波焼は、瀬戸、常滑信楽、備前、越前とならんで日本六古窯のひとつに数えられる古い歴史を持ち、平安から鎌倉期に成立して以後、今日まで命脈を保っている陶器とされている。丹波古陶館はその歴史を実際の器の展示であますことなく見せてくれる、とてもすてきな美術館でした。
水尾比呂志の「民窯の旅」(芸艸堂)の丹波焼の項を読むと、水尾氏は丹波焼の真骨頂は“灰被(はいかづき)”と呼ばれる薪の灰による自然釉にあって、つまり釉薬の使用がはじまる江戸期以前のものに丹波焼の真の美しさがあるとしている。うん、たしかにそれはわかる。展示されている鎌倉・室町期の古陶をながめると、ダイレクトに火の力を受けた力強さみたいなのがびくびく伝わってくるもの。でもね、一方でそういう人為を超えたところの美しさを至上とするっていうのは、なんか民藝原理主義にすぎるんじゃないかな〜ていう気もするわけです。僕としては、江戸期の筒描(いっちん)や墨流しを使った陶器も、なんか余裕をもって遊ばせてくれる気がしておもしろかったな。とにかく、ため息が出るようなすぐれもの揃いで、陳列棚の前でぼんやりながめるだけで意識の薄皮がいちまいにまいさんまいめくれてくような感覚を味わえるのです。帰りがけには、併設されているミュージアムショップに置かれている現在の丹波焼のなかから、厚手の小鉢を購入しました。
すこし周辺を散歩してから、大手新丁という店に入って名物らしいとろろ御膳で昼食。
つぎに向かった兵庫陶芸美術館では現在、バーナード・リーチ展を開催しています。 「1.出会い〜やきものの方へ」「2.セント・アイヴス」「3.富本憲吉・濱田庄司・河井寛次郎とともに」「4.民藝運動の中で〜日本の民藝を訪ねて」「5.成熟と多様性」という構成はわかりやすく、昨年できたばかりの美術館なので展示室なんかもきれいで観やすくてよかったです。ただ、リーチの作品をこうやって時系列で通してみると、最後の「成熟と多様性」のとこでなんか寂しくなっちゃうんですよね。一緒に観ていた妻も、1〜4くらいまでは濱庄×リーチ、河寛×リーチ、柳×リーチとか、「もうリーチはしょうがないよね〜」とかリーチ総受けに近い妄想を楽しそうに話してくれていたのに、最後で「なんかリーチ上手になっててつまんない……」とか言い出すしまつ。そうだね、晩期のリーチの陶器はそのフォルムの充実かげんだとか、もちろん見るべきところはいっぱいあるだろう。だけど! くねくねしたタコとか! 目つきの悪いウサギとか! まじで?て疑うくらい粗い仕上げとか! 僕らはそんな隙ありまくりのリーチが好きなんだよう! いや初期のそのへん楽しいだけでもじゅうぶんですけど。
いやー満足したねということで帰りみち三田西ICから中国自動車道に入るまえに、妻が所望のエス コヤマというパティスリーに寄ってみる。すると新興住宅地にあるその店を長蛇の列が取り巻いているのです。有名な店らしいけどアレはちょっと異常な風景だと思う。並んだら1時間待ちということを聞いて、僕たちは早々にあきらめて家路についたのでした。