1973年

ジョージ・ルーカスの「アメリカン・グラフィティ」は、アメリカのグッド・オールド・デイズを描いた青春ものということで、すっかり古典あつかいをされている映画です。しかしみなさん、この映画の時代設定と公開年を知っていますか? 僕も調べものをしていたついでに知ったんだけど、時代設定が1962年で、1973年に公開されている映画なんですね。そのあいだが11年しか経過していないことに、ちょっとびっくりしました。
だって2007年の現在、1996年の日本を舞台にした映画を観たとして、とてもおなじように感じられるとは思えないからなあ。96年ていうとあれか、登場人物たちはコギャルだな。音楽は小室ファミリーだ。これはこれでちょっと楽しいかもしれないけど、遠眼鏡をぎゃくに覗いたような、時代の遠近感をともなった喪失感は感じられないと思う。
アメグラものを現代日本で成立させるには、11年どころじゃ足りなくて、もっと時代をさかのぼらなくちゃならないのだろうか。スピリッツに連載されてた「東京エイティーズ」はアメグラものの正統だと思うけど、80年代の前半〜中盤くらいの時代設定だろうから、20年以上は昔の話になるし。
と、ここまで書いたところで、現在公開中の犬童一心の映画「黄色い涙」のことを思い出した(観てないですけど)。やっぱり時代はさかのぼりすぎなんだけど、考えてみたら原作の漫画「若者たち」(永島慎二)が発表されたのは70年代のはずじゃないか。調べてみると、コミック単行本として最初に刊行された版と思われる双葉社アクションコミックスの初刷が1973年。雑誌での発表は前年くらいになるかもしれないし、舞台となる時代は1963年なので、多少のちがいはあるけれど、ここには何か一致する空気があったんじゃないだろうか。
現在から1970年代を振りかえるときは、どうしても単純にノスタルジーの対象としてしまいがちなんだけど、追憶の主体としての1973年をもう少し掘り下げて考えてみてもいいかもしれません。そういえば「1973年のピンボール」も、その意味でなかなか興味ぶかい小説ですね。

アメリカン・グラフィティ [DVD]

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黄色い涙

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