むかしの恋のはなし

んーとですね、男は昔つきあった彼女のことを忘れられない生きものであるとかなんとか、そういう物言いってあるじゃないですか。あれ腹たつね。男というおおざっぱな括りに入れられることの違和感というより、そもそもおまえに生きもの呼ばわりされる覚えはないですよ。あと上書き保存だか名前をつけて保存だかいうのもよくわからない。こちとら縦に並べて全部最小化で常に手前に表示ですよ?
しかし、先日勤務先の男性社員だけの飲み会でなんかの拍子に「嫁さん以外の人と結婚してたらって考えるときあるー?」という話題になって、既婚者の半数以上があるわなと云っていたのでびっくりした。部長は昔の淡くて苦い恋の話なんてはじめちゃったりしてさー。
女性は昔の恋人のことを忘れるものなのか、そこのところは僕にはよくわからない。ほんとに忘れてるとしたら、それなんてアブダクションていうか、ちょっと怖いですね。どちらかというと、男女で異なるのはその記憶についての語り方というのが正解に近いんじゃないかと睨んでいる。この手のトーキンバウトのスキルで女の子にかなうわけがないのだ。女性が話す昔の恋人の話というのは、たいがい聞いてておもしろいからね。小豆島の旅館でケンカしたあと昼寝してたら置き去りにされた話とか、彼氏の浮気を喫茶店で詰問していたら黙り込んだあげくにアイスコーヒーを頭からかけられて、すたすた出口へ向かった彼氏が何を思ったか途中のテーブルの客のコーヒーをじぶんの頭にかけたらまだ熱かったらしく「あっついあっつい!」と踊ったあげくに「これであいこやから!」と意味不明の捨て台詞を残して去った話とか。
僕はそういうエキサイティングな体験をしていないので語ることもないんですけど、また部長がめそめそした話をはじめたら、「で、おっぱいおっきかったんですか?」とか、そっちの方向に話をもっていくスキルを、おっさんとして向上させていきたいと考えています。