クリスマス・アニメーションを楽しもう

こどもがいて便利なのは、おっさんがアニメや絵本を鑑賞していても不自然ではないところです。なあんて、これまでにも後ろめたさなんてみじんも感じたことはないんですけど、それはともかく、YouTubeで視聴できるクリスマス・アニメーションをさらってみたので、いくつか選んで紹介します。
http://youtube.com/watch?v=sKIh7Y67d3Y
「ピングー一家のクリスマス」 「ピングー」のすごいところは、「ピーナッツ」を対極に置いてみることでわかりやすくなるんじゃないかと思います。つまり、大人にも人生があることをきちんとディテールで描いている点。この話では、クリスマスの準備をするうちに険悪になったパパとママが、ピングーとピンガが泣いてるのを見てチュッチュッと仲直りするところにぐっときます。
http://youtube.com/watch?v=OCmksy4toZs
「Christmas Cracker」 カナダNFBが1963年に制作したクリスマス・フィルム3本立て。冒頭をかざるのはノーマン・マクラーレン! 収録されているのは彼の代名詞でもある“カメラレス”なやつじゃなくて、「Canon」(1965)で見せたような切り絵アニメーションです。ジングルベルに乗せて男の子と女の子が踊る小品、意外に娘にもうけてましたよ。NFBの公式サイト(http://www.nfb.ca/)もおすすめです。
http://youtube.com/watch?v=GDKP7epNr6w
「Rudolph The Red-Nosed Reindeer」 “赤鼻のトナカイ”のアニメーション、ここではマックス・フライシャーがかかわった1948年の作品を。まあ、監督でクレジットされてるものの実質はスーパーバイザー的な役割だったみたいですけど……。とはいえ、トナカイたちの異常なほどの優美な動きからは、この時代の米国アニメーションがふつうに持っていた底力を感じとることができるんじゃないでしょうか。
http://youtube.com/watch?v=oXzriJ2LDpI
「California Raisins - Rudolf the Red nosed reindeer」 しかし実はこういうのもあったりしてね……。ウィル・ヴィントンによるカリフォルニア・レーズンのCM、クリスマス編です。歌はテンプテーションズ。まさにキモいのひとことにつきますが、コメント欄での「おお俺のこども時代よ…!」「最高だ!」などの理解不能なつぶやきを追うのもまた一興。
http://youtube.com/watch?v=WVpCBbtozVY
「クリスマスの夢」 気分を変えてカレル・ゼマン。さまざまな映像スタイルを駆使したゼマンですが、処女作であるこの作品には、人形に命を与えることの素朴なよろこびが満ちています。娘は飽きてとちゅうでどっか行きましたけどね。余談ですけど、検索中に鯉の動画ばっかり出てきて、なんじゃこらと思ってたら、チェコではクリスマスに鯉を食べるんだそうです。意外。
http://youtube.com/watch?v=PYRPP8fyZqc
「Рождество」 ロシアからはミハイル・アルダシンによる生誕劇を。ヨセフは足の臭そうなおっさんだし、マリアは貧乳だし、天使はぼんやりしとるし、それなのになぜこんな美しい物語となってしまうのか……。個人的にはかなりおすすめです。アルダシンはユーリ・ノルシュテインの指導を受けた世代の代表格で、彼自身の風貌も、昔日の美少年ぶりをうかがわせつつ、いまは足の臭そうなロシアのおっさんというタイプのひとです。
http://youtube.com/watch?v=jHy_l8YRY2U
「Christmas Time is Here」 アマチュアによるクレイアニメ作品もひとつ紹介。The Hiptonesがカバーした「Christmas Time is Here」に合わせて変なキャラクターたちが動いて歌います。選曲の勝利という気もしますけど、クラシックなラジオの鏡面に映る登場のしかたなんて、なかなかしゃれてるじゃないのー。
http://youtube.com/watch?v=o9OwjVFM56w
「Adam et Ropé Paper Christmas」 変わり種をひとつ。Adam et Ropéが2006年に制作したらしいクリスマス・アニメーション。店舗で流したりしていたのかな? かわいらしいペーパークラフト・アニメです。
さて、1930年代の米国ではカラー・アニメーションの短編シリーズがいくつか制作されていました。もちろんその嚆矢はディズニーの「シリー・シンフォニー」で、その成功を受けて配給会社や他のスタジオが制作に乗りだしたというわけです。あからさまな二番煎じ、三番煎じもありましたが、フライシャー・スタジオの「カラー・クラシック」、アイワークス・スタジオの「コミカラー・カートゥーン」などの良作を残したシリーズもあります。というわけで、以上の3シリーズから1作ずつご紹介。
http://youtube.com/watch?v=FtkMlciohSg
「Jack Frost」 「コミカラー・カートゥーン」から。厳密にいえばクリスマスを題材にはしてないんですけど、公開が1934年12月24日のクリスマス・プログラムということで。アブ・アイワークスはディズニー在籍時に「シリー・シンフォニー」初期のメインアニメーターであり、ミッキーマウスの生みの親でもありました。独立後に制作したのがこのシリーズですけど、この1作を見るだけでも、30年代以降何十年もの時間にわたって米国アニメーションを支配しつづけた文法の多くが、彼によって形づくられたものだと想像できるんじゃないでしょうか。
http://youtube.com/watch?v=1gW3rznLI_g
「Christmas Comes But Once A Year」 「カラー・クラシック」から。クリスマスの朝、目を覚ました孤児院のこどもたちはプレゼントのおもちゃを発見して大よろこび、さっそく遊びはじめますが、これがとんだボロばかりでぜんぶすぐに壊れてしまいます。泣いてるこどもたちのもとに、どっかで見たことのあるおっさんが……。ナンセンスさを求める向きにはこれが一押しですね。しかしWikipediaでは、30年代後期のフライシャー兄弟に対する評価が妙に低くて首をひねる。これはあれだな、世界のどこにでもいるベティ・ブープ原理主義者のしわざだな、とにらんでいます。
http://youtube.com/watch?v=si-m9PhbOso
「The Night Before Christmas」 「シリー・シンフォニー」から。クリスマスイブの夜、こどもたちが寝静まった家にサンタが訪れます。そこで繰り広げられるのはおもちゃのパレードとクリスマス・デコレーション。騒ぎ声に目をさましたこどもたちが目にしたのは……。監督のウィルフレッド・ジャクソンはこのシリーズで多くの作品を手がけたものの、アニメーターとしてアイワークスやフライシャー兄弟のように名声を得た人物ではありません。それでも僕は、クリスマス・アニメーションとしてこの作品がいちばん好きです。いやみじゃなくって、やっぱりこの時代からディズニーは夢をパッケージングすることに長けているんですよね。ちょっと引くときもありますけど、クリスマスという多幸感に満ちた季節には、これぐらいサービスしてくれてちょうどよいのです。
いわゆる国産アニメにも取りあげたいものはあるんですけど、YouTubeで視聴できるものということで、ちょっと偏ってしまいました。ざんねん。みなさま、よいクリスマスを!