嫁あるいは困難な存在

しかし配偶者をなんと呼ぶかってむずかしいですよね。結婚6年めでどのツラさげてという感じですけど。この日記では妻という呼称を使っていますが、だれも知らないことに僕のなかではあれは「つま」ではなく「さい」なんである。なんか文豪ぽい。しかし僕の暮らすのは「うちの妻(さい)がね……」なんて云ったりするとまちがいなく「きみんとこ動物園か?」といういにしえのいとこい師匠のツッコミが入る西の町であるため、「うちの奥さんがね……」というフツーの呼びかたをしているわけですが、これはこれで浮きぎみになって困るというのは、この町ではおっさんの80%は「うちのよめはん」だからである。
あんまり嫁という呼びかたを使わないカルチャーに育ってきたんですけど、べつに完全否定というわけではなく、素人にはお薦めできない諸刃の剣というか。しかしまわりのど素人どもがふつうのテンションで「よめはん」などと云ってるのを聞くと、郷に入りては郷にしたがって40歳までにはよめはん呼ばわりをしたいと考えています。
というのが三人称の話ですけど、二人称についてもわりとむずかしいのね。妻と僕の母がおなじなまえだというもっぱら個人的な事情によって、なまえ呼び捨てという成人男子のスタンダードが使いにくいのである。いや、今ならそのなまえが第一に指し示すのは妻以外にないわけだけど、どっかでそれを使うタイミングを失ったまま現在に至る。そこでなんかこう書くのも憚られるような愛称で呼んでいるわけですが、人前のときとか非常に困るんですよね。そういえばまえにコーナンで買い物してるとき妻がふらふらどっか行って、人が周りにいたので遠くからなまえ呼び捨てで叫んだら、妻がぴょんと飛び上がったのでおもしろかった。呼ばれるほうも慣れてないので、めっちゃ怒られたような気になると推測される(じっさい怒ったんだけど)。あと知り合ってからつきあうまではハンドルネームで呼んでたという黒歴史もあるな。
で、先日妻の誕生日にケーキを買ってきたんですが、メッセージはなんて入れますかと訊かれて、うーんと考えたあげく、おかあさんにした。箱を開けたら喜んでいたので、まちがいではなかったんだろう。むずかしいんだなあ、こういうの。